メイプルシロップ・パイオニア編(Maple syrup-Pioneers)
とうさんが、じいちゃんたちと一緒にかえで蜜やかえで砂糖を作ったとき、じいちゃんの家でダンスパーティーがありました。当時、親戚や近隣同士が集まって大きな作業をしたときは、必ずといっていいほど、飲んだり食べたりして楽しいひとときを過ごしました。ひと働きして汗をかいてのお楽しみというわけです。そのとき、ローラが食べたのがメイプル・キャンディーでした。
「ばあちゃんは、真ちゅうの鍋の前に立って、大きな木のスプーンで、熱いみつを、みんなの雪のはいったお皿につぎます。みつはひえて、やわらかいあめのようになり、それをすぐみんなは食べるのでした」(「大きな森の小さな家」)
なんといっても、このメイプル・キャンディーに憧れました。日本に居たときは、雪のほとんど降らないところに暮らしていて、メイプルシロップなんて見たことも食べたこともなかったので。だから、こちらに移住して、メイプルシロップ・フェスティバルでこのキャンディーを見たときはもう大感激でした! 熱いシロップを雪の上にかけると、すぐに冷えて固まります。見た目はかたまったカラメルソースみたいで、ぐにゃぐにゃしていて歯にくっつくけれど、これがおいしい! キャラメルほど甘くないし、クリーミィーでもないけれど、メイプルシロップの素朴な風味が味わえます。小学校四年生くらいの女の子は、白いお皿が真っ白になるまで、なめるように食べていました。チョコレートやキャンディーを毎日のように食べている子どもたちでも、そうなのですから、たまにしか甘いものを食べられなかったローラやメアリーにしてみれば、「メープルシロップ作り=じいちゃんの家のパーティー=キャンディーが思う存分食べられる日」だったのでしょう。
でも、その甘くておいしいキャンディーを食べるには、ものすごーく手間と時間のかかる作業がありました。






感想
樹液を採るのは、地上から一メートルのところで、七十五センチ以上あるカエデの樹です。まったく葉のない冬にカエデの木を見分けるのは、三つのBが決め手になります。最初のBはBranch(枝)。カエデは幹から二つに枝分かれして、その枝も二つに枝分かれして、その枝もさらに二つに枝分かれします。二番目のBはBud(芽)。メイプルシロップ作りの時季には芽ぶいてきて、枝はたくさんの芽をつけています。三番目のBはBark(樹皮)。丸いような模様が特徴です。
樋を差し込んでバケツを置くのは、必ず陽のあたる側です。樹液の循環が活発だからです。じいちゃんはバケツを根元に置いて樹液を受けていましたが、樹液を無駄にしないように、次第に幹にかけるようになりました。
大きな鉄の鍋を下げた開拓時代のメイプルシロップ作りは、雰囲気たっぷりですが、お鍋の中には葉っぱが浮いていたり、虫が泳いでいたり、風が吹くとゴミが入ったりします。ジャリジャリのシロップにならないように、仕上げにチーズクロス(ガーゼのような布)で漉しました。
シロップを煮詰めていたローラのばあちゃんが、「シロップが固まりかけてきましたよ」というと、みんなはお皿に雪を用意していました。キャンディーを作るには、シロップがドロリとなるまで煮込んでから、雪にかけます。
十年以上前、メイプルシロップ・フェスティバルに行ったとき、キャンディー用の大きな台があって、雪の上にシロップを垂らして目の前で実演してくれました。子どもたちはキャーキャーはしゃぎながら、競ってキャンディーを食べていました。でも、最近は大気汚染の関係で厳しくなって、出来なくなったようです。今回、キャンディーの実演を見学できたのはラッキーでしたが、「ホントはいけないから、こっそりやっているの」という雰囲気でした。いつかこれもなくなってしまうんでしょうね。残念です。こんなに楽しくておいしいものなのに。
十年以上前にたべたキャンディーは、メイプルシロップに生クリームを入れて煮込んでいましたが、今回のはシロップだけでした。どちらもおいしいけれど、メイプルの風味を味わいたいなら後者がおすすめです。でも、現代人の舌には生クリーム入りの方がおいしいかもしれません。
今ではメイプルシロップやシュガーを使ったものが、いろいろと出回っています。メイプルクッキーにメイプルチョコレート、メイプルバターにメイプルティー、メイプルタルトにメイプルソーセージなどなど。ソーセージは意外ですが、おいしいです。メイプルシロップというとパンケーキですが、ローラはパンにつけて食べていました。私の友人もトーストに合うといっています。
今、ふっと思ったのですが、雪がダメならかき氷は? 今は日本でもメープルシロップがあるので、かき氷の上に熱々のシロップをたらしたらキャンディーが出来るし、あまった氷にはイチゴやメロンのシロップをかければ、かき氷も食べられる。一粒で二度おいしいと思うけれど・・・・。


























