白砂糖 (white sugar)
アルマンゾは食事の度にプレザープやジャムやジェリーを、お腹がキツキツになるまで食べていました。あるときなど七面鳥やハムや豆の煮込みをたっぷり食べてから、甘いジャムやプリザーブを食べ、さらにパンプキン・パイをひと切れ、カスタード・パイもひと切れ、ヴィネガーパイもひと切れ、さらにミンス・パイにも手を出したというのだから、お腹がはちきれそうになるのも無理はありません。
十九世紀のある料理家は「ジャムやプレザーブは高価で健康にも良くないし、役にも立たない」と言っています。ところが別の人は「これがなくっちゃ、エピキュリアン(快楽主義者)の人生は始まらない」とも。なぜ、こんな意見が飛び交うかというと、高価な白砂糖をふんだんに使ったものは贅沢品だったからです。質素な暮らしをしていたインガルスの食卓にそれほど甘いものが上がらなかったのは、経済的な事情からでしょう。さてはともあれ、アルマンゾがエピキュリアンしていたのはまちがいありません。
そのエピキュリアンにかかせない砂糖は、西インド諸島から輸入されました。円錐形の塊のまま輸入されたので、店から塊のまま購入したときはニッパーという道具で砕き、すり鉢でパウダー状にしてから使いました。


感想
ある歴史記念館で、十九世紀の料理教室に参加したとき、小さく砕いた砂糖の塊を、すりこぎとすり鉢で粉にしたことがあります。これが岩みたいに硬い! なかなか粉状になってくれないので、すりこぎでガンガン叩いていたら、「叩かないですりつぶして下さい」と叱られてしまいました。それくらい硬いです。
砂糖は高価な買いものだったので、円錐形のまま購入したときは、わざと窓際に置いて、近所に自慢することもあったようです。「あそこの家は白砂糖の塊があるのよ。けっこうお金持ちなのね」「あの奥さん、がっちりしてるからねえ」「ホント、そうよねェ」なんていう噂が、村じゅうに広まっていたのでしょう。
当時は精製技術が発達していなかったので、砂糖には不純物がまざっていました。ジャムやジェリーを作るときには、砂糖を水で溶かしてから卵白を加え、不純物を取り除いてから使いました。
インガルスがカンザスに暮らしていたとき、大雨が続いて、ローラたちのクリスマスのプレゼントを買いに行かれなかったことがありました。そうするとかあさんは、「白砂糖がありますよ」と、とうさんに話していました。そんなところからも、白砂糖がいかに特別なものだったのかわかります。
写真のニッパーはかなり大きめですが、手のひらに乗るくらいのものもあります。初めてみたときは、ペンチかと思いました。ホテルの食堂のテーブルなどでも、ニッパーが置いてあって、好きな分だけ取ることができました。
今の角砂糖は、紅茶やコーヒーに入れるとすぐにとけますが、昔の砂糖はなかなかとけなかったので、前歯に砂糖を挟んで、紅茶を飲んでいたという話を聞いたことがあります。そうやって砂糖を挟んでいると、しだいに前歯が虫歯になってしまいます(当時、毎日の歯磨きの習慣はなかった)。そういう歯のことを、昔はsweet toothといったそうです。今ではsweet toothといえば甘党のことを指します。