アップルサイダーパイオニア編(apple cider-pioneer)
冬の晩、アルマンゾの家では食事を終えて片付けものがすむと、家族そろって食堂のストーブのそばで、寝るまでのひとときを過ごしました。そのときアルマンゾは、水気の多いリンゴをひとかじりしてはポップコーンをつまみ、大きなカップに入れたアップルサイダーをグッと飲んだものでした。
さて、アルマンゾの飲んだアップルサイダーとは何でしょう・・・? これは本当に翻訳家泣かせの言葉だと思います。サイダーというと炭酸飲料のようですが、アップルサイダーに炭酸は入っていません。ある邦訳では「りんご酒」と訳されていますが、アルコールも入っていません。「りんごジュース」とも訳されていますが、日本で売っている、透きとおったりんごジュースとは味も見た目も違って、ジュースほど甘くありません。アップルサイダーはリンゴを砕いて果汁を絞ったもので、茶色く濁っていて、もっと生のリンゴの香りがします。
ここにあげた写真は、ある開拓村に展示されている十九世紀のアップルサイダー製造所で、サイダー作りのデモンストレーションをしているところです。毎年九月のパイオニア・フェスティバルで実演するそうで、作っている人たちは製造所の元所有者の子孫だとか。彼らにとってサイダー作りは、年に一度、親戚中が集まってワイワイやる、お楽しみの行事だそうで、なんだか、とっても楽しそうでしたよ。




感想
アップルサイダーにはハードとソフトがあって、ハードはアルコール分のあるりんご酒で、ソフトはりんごの果汁の飲み物を指します。でも、アメリカでアップルサイダーといえば、たいがいソフトの方を意味します。
りんごの果汁は圧縮機に敷いたわらを通ってろ過されるので、果汁にわらの香りが加わって独特の風味を生み出します。ただし、これは手作りのサイダーだからで、市販のアップルサイダーはわらの香りはしません。
わらにも色々な種類があって、それぞれ香りが違いますが、小麦のわらがいちばん美味しいそうです。わらの香りがうつるので、市販のアップル・サイダーとはまったく違う味になるそうです。
わらの香りのするサイダーをごちそうになってみたかったけれども、「食品安全の面で厳しくなったので、ダメなのよ」ということでした。(;_;)
冬になると、アップルサイダーにシナモンやクローブなどのスパイスを加えて、温めて飲みますが、それはmulled ciderと呼ばれています。これもおいしい! 身体があたたまります。
アルマンゾたちは良質のリンゴをもいだあとに、サイダー用の傷んだリンゴを取っていましたが、サイダーファンにいわせると、あれは「本当にけしからん」のだそうです。
アップルサイダーはたいがいどこのスーパーでも売っていて、必ず冷蔵庫に入っています。アップルジュースは常温で保存されていて、ふつうの棚にならんでいます。
サイダーというと炭酸飲料のようですが、英語で炭酸飲料はpopなので、これは和製英語だと思います。ciderを辞書で引くと「りんごジュース、りんご酒」と出てきます。もとの意味をなさない和製英語って翻訳者泣かせですね。日本で英語の先生をしていた友人が「日本語でいちばんむずかしいのが和製英語」といっていましたが、本当にそう思います。日本から離れて久しいせいか、日本人の私でさえ、「ホイッパー」(泡立て器のwhiskのこと)、「リベンジする」(英語のrevengeは復讐、報復の意)、「アジアン」(Asian・・英語の発音はエイジアン)、と言われても、最初はわかりませんでした。いったい誰が考えるのでしょう?