料理用ストーブ(cooking stove)
プラムクリークの横穴小屋から新しい家へ引っ越したとき、とうさんがかあさんにプレゼントしたのが料理用ストーブでした。かあさんを驚かそうと、とうさん、ローラ、メアリーでずっと内緒にしておいたものでした。ローラとメアリーが、かあさんを料理用ストーブのそばにひっぱって行くと、かあさんはフタをとってみたり、通気孔をのぞいたりして嬉しそうな声を上げていました。それまでのストーブにはオーブンがなかったので、かあさんにとって何よりも嬉しい贈り物だったんだろうなあ。オーブンがあるとないとでは、料理のレパートリーもぐんと違ってくるし・・・。「こんなりっぱなストーブじゃ、食事を作るのももったいなくて・・・」といいながらもかあさんは、そのストーブでさっそく食事を作ってくれたのでした。




感想
料理用ストーブが出回り始めたのは十八世紀末。温度調節がままならなかったり、オーブンが小さすぎたりとトラブルも多かったのですが、十九世紀半ば過ぎには一般家庭にかなり浸透するようになりました。これは東部で薪の入手が難しくなって石炭が普及し始めたことや、鉄鋼業の著しい発達とも結びついていました。
暖炉の調理に慣れ親しみ、家庭のシンボルとして愛着のあった女たちは、容易に暖炉を手放そうとはしませんでした。ストーブの普及に半世紀以上もかかったのには、そんな理由もあったようです。
料理用ストーブは燃料が節約できる、暖炉よりも熱効率がいい、部屋の真ん中におけるので室内が平均して温まる、しゃがまなくてすむ、火傷の心配も少ないといいこと尽くしでした。それに煮たり、ゆでたり焼いたりが同時に出来るようになって、食事もバラエティに富んで食生活はぐんと向上しました。
でも、ストーブは気まぐれで、ときにストライキを起こしました。そこで女たちは、聞き分けのない子どもを諭すようにストーブに話しかけていたそうです。「おやおや、今日はごきげんななめだね。どうしたんだい?」
でも、彼女たちも下手にばかり出ていたわけではありません。ご機嫌の直らないストーブは、予備用に格下げされたり物置に閉じこめられるはめになりました。
「料理用ストーブは温かかったと思うと急に寒くなる」とローラもこぼしていたように、ときに気まぐれで、一定の温度を保つのに苦労します。いつも火加減を見ていなければならないし、それに火が見えないから、つい薪を入れるのを忘れちゃう・・・これはストーブのせいじゃないけど。
ここにあげた料理用ストーブは1865年に作られたもので、今でも毎日使っています。150年近くの保証つきなんて、ここまでくると、たいしたものだと思う。